2023年10月にステルスマーケティングが景品表示法の規制対象となって以降、インフルエンサー投稿のPR表記は「付けるかどうか」ではなく「どう付けるか」が問われる段階に入りました。表記はあるのに位置が分かりにくい、文言が曖昧、ハッシュタグの中に埋もれている。こうしたケースは「表示していない」と同じ扱いになり得ます。

この記事では、PR表記が必要なケースを整理したうえで、Instagram・X・TikTok・YouTubeの媒体別の付け方、案件タイプ別の例文集、避けたいNG例、そして企業がインフルエンサーに表記を依頼するときの伝え方までをまとめました。投稿前のチェックや依頼書の作成にそのまま使える構成にしています。

あわせて読みたい

規制の全体像と考え方は ステマ規制とPR表記ガイド で解説しています。ギフティング案件の表記が気になる方は ギフティング案件とは もあわせてご覧ください。

目次
  1. PR表記が必要なケース
  2. 媒体別の付け方(位置・文言・タグ)
  3. 案件タイプ別の例文集
  4. 避けたいNG例
  5. 企業がインフルエンサーに依頼するときの伝え方
  6. 運用上の注意点

PR表記が必要なケース

ステマ規制の考え方を大まかに言えば、「事業者の表示なのに、一般の消費者がそれを事業者の表示だと判別できない」状態が問題になります。つまり、企業が投稿内容に関与しているのに、消費者からは個人の感想に見える投稿が対象です。

一般的に表記が必要と考えられる代表的なケースは次のとおりです。

逆に、自分で購入した商品を企業の関与なしに紹介する投稿は、一般的に対象外と考えられています。ただし境界はケースごとに判断が分かれるため、迷ったら「表記する」側に倒すのが安全策です。最新の判断基準は消費者庁の公開資料で確認してください。

媒体別の付け方(位置・文言・タグ)

表記の要件は「投稿を見た時点で広告だと分かる」ことです。位置は冒頭、文言は明確、他のタグに埋もれさせないが共通の原則になります。

媒体 表記の位置 推奨の文言 タグ・機能の使い方
Instagram(フィード・リール) キャプション1行目。画像・動画内にも入れるとより確実 「#PR」「【PR】」「○○の提供で投稿しています」 タイアップ投稿ラベルを併用。ラベルだけに頼らずキャプションにも記載
Instagram(ストーリーズ) 画面上部など最初に目に入る位置 「PR」「広告」「提供:○○」 タイアップラベルを使用。文字は視認できるサイズにする
X ポスト本文の冒頭 「#PR」「【PR】」「広告」 スレッド形式は1ポスト目に必ず記載
TikTok 動画冒頭にテキスト表示+キャプション冒頭 「#PR」「プロモーション」「提供:○○」 コンテンツ開示機能でプロモーションラベルを設定し、動画内表示と併用
YouTube 動画冒頭に画面表示+タイトルまたは概要欄の冒頭 「【PR】」「提供:○○」「プロモーションを含みます」 「有料プロモーションを含む」設定を有効にし、動画内と概要欄にも記載

共通して言えるのは、公式ラベル機能だけで済ませないことです。ラベルは閲覧環境によって表示のされ方が異なり、見落とされることがあります。「ラベル+テキスト表記」の二重化が現在の実務では一般的です。

案件タイプ別の例文集

案件タイプによって、表記に添えるべき情報が少しずつ異なります。冒頭の表記に加え、本文中で提供や関係性を自然に説明すると誠実な印象になります。

例文:ギフティング(商品提供のみ・報酬なし)

【PR】○○様から商品をご提供いただき、実際に使ってみた感想を投稿しています。
(本文)2週間使ってみて、特に気に入ったのは……

例文:報酬あり(単発のタイアップ投稿)

#PR #○○(ブランド名)
○○のタイアップ投稿です。
(本文)今回ご紹介するのは……

例文:アフィリエイト

【PR】この投稿にはアフィリエイトリンクが含まれます。リンク経由で購入された場合、紹介料を受け取ることがあります。
(本文)実際に購入して使ってみた結果……

例文:長期契約(アンバサダー等)

【PR】○○のアンバサダーとして活動しています。
(本文)今日は新作の……

※プロフィール欄への記載だけでは不十分とされる可能性があるため、投稿ごとの表記は省略しないでください。

避けたいNG例

表記そのものはあっても、「一般の消費者が判別しにくい」状態であれば、実質的に表記なしと同じ扱いになる可能性があります。

NG例 何が問題か 改善方法
「もっと見る」を押さないと見えない位置に#PR 投稿を見た時点で広告と分からない 1行目に移動する
大量のハッシュタグの中に#PRを1つ混ぜる 他のタグに埋もれて視認できない タグ群から切り離し、冒頭に単独で置く
動画内の表示が極端に小さい・一瞬で消える 視認性が確保されていない 読めるサイズで一定時間表示する
「#sponsored」「#ad」など英語表記のみ 一般的な閲覧者に伝わらない場合がある 「PR」「広告」など広く認識される表記を使う
「#タイアップ」「#コラボ」など曖昧な表現のみ 広告であることが明確に伝わらない 「PR」「広告」を明記したうえで補足として使う
プロフィール欄や固定投稿にだけ記載 個々の投稿を見た人には伝わらない 投稿ごとに表記する
POINT

迷ったときは「初めてこの投稿を見た人が、スクロールを止めずに広告だと気づけるか」を基準にしてください。表記の有無ではなく「伝わるかどうか」で考えると、NG例の大半は自然に避けられます。

企業がインフルエンサーに依頼するときの伝え方

ステマ規制の対象は事業者側であり、インフルエンサーの表記漏れは企業の責任として扱われる可能性があります。「表記はお任せします」ではなく、依頼時に具体的な表記方法を指定し、投稿前に確認する体制が必要です。

テンプレート:依頼書・依頼メッセージに入れる文面

【広告表記について】
本投稿は景品表示法上の広告表示に該当するため、以下の表記をお願いいたします。
・キャプションの1行目に「#PR」または「【PR】」を、他のハッシュタグと分けて単独で記載してください
・Instagramはタイアップ投稿ラベルを、YouTubeは「有料プロモーションを含む」設定を有効にしてください
・動画の場合は、冒頭に「PR」の文字を視認できるサイズで表示してください
・公開前に下書きを共有いただき、弊社で表記を確認したうえで公開をお願いいたします
表記が不十分な場合は修正をお願いすることがあります。ご不明な点があればお気軽にご連絡ください。

表記ルールは依頼メッセージだけでなく契約書やガイドラインにも盛り込んでおくと、認識のずれを防げます。契約で押さえるべき項目は インフルエンサー契約書の論点 で整理しています。

運用上の注意点

本記事は一般的な実務上の整理であり、個別の案件が規制対象になるかどうかは、消費者庁の公表資料や専門家の確認を優先してください。

まとめ

PR表記の実務は、「冒頭に」「明確な文言で」「埋もれさせずに」「ラベルとテキストを併用して」という原則に集約されます。媒体別の付け方と案件タイプ別の例文を手元に置いておけば、投稿のたびに迷うことはなくなります。

企業側は「表記はインフルエンサー任せ」にせず、依頼時の指定と投稿前確認を仕組みにしておくことが重要です。規制の背景は ステマ規制とPR表記ガイド を、案件の種類ごとの整理は ギフティング案件とは をあわせてご覧ください。