UGCマーケティング手法とは、ユーザーが自発的に発信するコンテンツ(UGC: User Generated Content)を起点に、認知→好意→検索→購買→拡散の購買行動サイクルを設計するマーケティング手法のことです。従来のAIDMA・AISASといった広告中心モデルに代わり、2026年現在の中心モデルは「ULSSAS(ウルサス)」。この記事は、UGC マーケティング手法を歴史的フレームワークの進化から ULSSAS の実装、SNS別の手法、KPI設計、中小企業の段階別ステップまで完全網羅した実務ガイドです。

UGCマーケティングの基礎理解はUGC(ユーザー生成コンテンツ)とは?効果・活用方法・成功パターン、CGMとの違いの整理はCGMとUGCの違いとは?用語整理とマーケティングでの使い分けを併せてご参照ください。

目次
  1. UGCマーケティング手法の全体マップ
  2. 購買行動フレームワークの変遷(AIDMA→ULSSAS)
  3. ULSSASフレームワークの詳細
  4. ULSSASを回す3つの起点
  5. SNS別のUGC手法実装
  6. ULSSAS / SIPS / DECAX の比較
  7. UGCマーケティング手法のKPI設計
  8. よくある失敗パターン6つ
  9. 中小企業の段階別ステップ

UGCマーケティング手法の全体マップ

UGCを起点としたマーケティング手法は、大きく3つのレイヤーで構成されます。それぞれ別個に存在するのではなく、上位レイヤーの設計に基づいて下位レイヤーの施策が決まる階層構造になっています。

レイヤー役割代表的なアウトプット
① 戦略レイヤー購買行動モデルの選定/KGI・KPI設定ULSSAS / SIPS / DECAX のフレーム選択
② 仕組みレイヤーUGCを継続発生させる仕組みの設計マイクロインフルエンサー起用/ハッシュタグキャンペーン/体験設計
③ 実行レイヤーSNS別の具体施策/二次利用/効果測定Instagram投稿・TikTok企画・X引用RP戦略

多くの企業が躓くのは、③の実行レイヤーから入ってしまうこと。「Instagramでハッシュタグキャンペーンをやろう」と施策ありきで始めると、UGCが生まれても次の購買行動に繋がらず、効果測定もできずに終わります。必ず①戦略レイヤーから設計することが、UGCマーケティング成功の前提条件です。

購買行動フレームワークの変遷(AIDMA→ULSSAS)

マーケティングの購買行動モデルは、メディア環境の変化とともに進化してきました。UGCマーケティング手法を理解するには、まずこの変遷を押さえる必要があります。

モデル提唱年代主要メディア段階
AIDMA1920年代マスメディア(新聞・ラジオ)Attention→Interest→Desire→Memory→Action
AISAS2004年Web検索Attention→Interest→Search→Action→Share
SIPS2011年SNS黎明期Sympathize→Identify→Participate→Share & Spread
DECAX2015年コンテンツマーケティングDiscovery→Engage→Check→Action→eXperience
ULSSAS2018年SNS主流時代UGC→Like→Search1(SNS)→Search2(Google)→Action→Spread

注目すべきは、AISASまでは購買行動の起点が「企業の出した広告(Attention)」だったのに対し、ULSSASでは起点がUGC(ユーザーの発信)になっていること。これは消費者が広告から情報を得る時代から、SNS上のユーザー発信から情報を得る時代へと変化したことの反映です。

ULSSASフレームワークの詳細

ULSSASは株式会社ホットリンクが2018年に提唱した、SNS時代の購買行動モデルです。UGC → Like → Search1 → Search2 → Action → Spread の6段階で構成され、各段階での施策設計が UGC マーケティング手法の中核になります。

U:UGC(ユーザー生成コンテンツ)

すべての起点。誰かが商品・サービスを使い、SNSに自発的に発信した瞬間からULSSASは始まります。企業がやるべきはUGCを「待つ」のではなく、発生する仕組みを意図的に設計すること。マイクロインフルエンサー起用、ハッシュタグキャンペーン、フォトジェニックな体験設計の3つが主要な発生手段です。

L:Like(いいね・好意)

誰かが投稿したUGCを別のユーザーが見て「いいね」する段階。ここでの「いいね」は、Instagram の Like ボタンだけでなく、保存・コメント・引用・スクショ保存といった広い意味の「好意の反応」を含みます。UGC の質が高いほど、Like率が上がります。

S:Search1(SNS内検索)

Likeしたユーザーが、商品やサービスの詳細を知るためにまずSNS内で検索する段階。Instagram のキーワード検索・ハッシュタグ検索、TikTok の検索バー、X の検索が該当します。Google検索より前にSNS検索が来るのがULSSASの特徴で、現代のZ世代・ミレニアル世代の購買行動を正確に反映しています。

S:Search2(Google検索)

SNS内検索で見つけた情報を、念のためGoogle検索で裏取りする段階。公式サイトの存在、口コミの量、価格情報を確認します。ここで公式サイトが弱い・口コミが少ない・SEO上で出てこない、となるとAction段階に進めません。

A:Action(購買)

EC購入、店舗来店、サービス申込、資料請求などの行動。ULSSASの設計が良ければ、ここまでの段階で十分な信頼形成ができているため、購買のハードルが下がります。

S:Spread(拡散・新たなUGC発生)

購買したユーザーが体験を SNS に投稿し、新たな UGC が発生する段階。ここで Spread が発生すると、次のサイクルの U(UGC)に繋がる循環構造になります。これが ULSSAS の最大の強み。

POINT

ULSSASは単方向の漏斗ではなく、Spread が次の UGC を生む循環構造です。最初の UGC が10件発生し、それぞれが平均2件の新規UGCを生めば、3サイクル目には80件のUGCが流通する計算。広告のように出稿停止で効果ゼロにならず、施策が「資産化」していくのが UGC マーケティング手法の本質的な強みです。

ULSSASを回す3つの起点

ULSSAS の循環は「最初の U(UGC)を発生させる」ことから始まります。中小企業が実装可能な代表的な起点を3つ紹介します。

起点1:マイクロインフルエンサー起用

マイクロインフルエンサー(フォロワー1,000〜10,000人)を月数名起用することで、UGCの「最初の波」を意図的に作る方法。フォロワーとの距離が近いマイクロ層の発信は、メガインフルエンサーより追随UGCが生まれやすく、ULSSASの第2サイクル以降が回り始めます。詳細はマイクロインフルエンサーとは?を参照。

起点2:ハッシュタグキャンペーン

独自のキャンペーンハッシュタグを設定し、参加者にインセンティブを付けてUGC投稿を促す方法。低予算で大量のUGCを集められる一方、参加者の質はマイクロインフルエンサー起用より落ちる傾向。キャンペーン終了後にUGCが急減するのが弱点で、継続性のためには別の起点と組み合わせる必要があります。

起点3:体験設計(フォトジェニック・動画映え)

商品パッケージ・店舗演出・サービス提供の瞬間を「思わず投稿したくなる」状態に設計する方法。星野リゾートの「インスタ映え」設計、スターバックスの季節限定メニュー、最近では「写真OK」ポイントを店内に意図的に作る飲食店など、業種を問わず応用可能。初期設計コストはかかるが、長期的に最も持続性が高い起点です。

SNS別のUGC手法実装

同じUGCマーケティング手法でも、SNSによって実装の細部が変わります。プラットフォームごとの特性に合わせた打ち手を整理しました。

SNSUGC主形態推奨手法避けるべき罠
Instagramフィード写真・リールハッシュタグキャンペーン+ストーリーズ再シェアキャンペーン応募者の質を見ずに大量再シェアすると公式アカウントの統一感が崩れる
TikTok動画レビュー・開封・ハウツーブランドハッシュタグチャレンジ+公式エフェクト配布視覚インパクトのない商材は無理筋。動画化しにくい商品は別SNSへ
Xテキスト感想・引用引用RP戦略+まとめ記事化炎上リスク管理を怠ると逆効果。否定的UGCの扱い方を事前にルール化
YouTube長尺レビュー動画商品提供→公式チャンネルに動画埋め込みサクラレビュー化すると視聴者の信頼が一気に下落
Threadsテキスト体験談引用+公式アカウントの会話参加X感覚で投稿してもアルゴリズムが違うため伸びない

ULSSAS / SIPS / DECAX の比較

UGCマーケティング手法のフレームワークは ULSSAS が現在の中心ですが、業種や商材によっては SIPS や DECAX の方が適合する場合もあります。それぞれの違いを整理しました。

フレーム起点適している商材適していない商材
ULSSASUGCSNS映えする消費財(コスメ・食品・アパレル・観光)BtoB SaaS・金融・保険など検討期間の長い高単価商材
SIPS共感(Sympathize)共感価値を持つブランド商材・社会課題系機能差別化が中心の家電・実用品
DECAX発見(Discovery)コンテンツマーケティング前提のBtoB・教育・士業瞬間判断で買われる衝動買い商材

多くの場合、メインフレームを1つ選んだ上で、補助的に別フレームを組み合わせます。たとえばコスメブランドなら「ULSSAS をメインに、ブランド共感パートで SIPS を併用」といった設計が現実的です。

UGCマーケティング手法のKPI設計

UGCマーケティング手法を実行する際は、ULSSAS の各段階に対応する KPI を設定するのが基本です。これにより、施策のどこで詰まっているかを特定でき、改善ポイントが明確になります。

段階KPI例目標値の目安(月次・中小企業)
U: UGC発生数ブランド名・商品名ハッシュタグでの投稿数月20〜100件
L: Like獲得数UGCに対するいいね合計/平均1UGC平均30〜100いいね
S1: SNS内検索数ブランド名検索表示数(Instagram Insights等)月500〜5,000回
S2: Google検索数指名検索数(Search Console)月100〜1,000回
A: ActionEC購入数/来店数/申込数商材により大きく変動
S: Spread購入者のUGC投稿率3〜10%(インセンティブ有無で変動)

すべての段階を同時に最大化する必要はなく、「現在最も詰まっている段階」を特定して、そこに集中投資するのが正しい運用方法。たとえばUGCは多く生まれているがS1(SNS内検索)が伸びない場合、UGCの質か発見性に課題があるという仮説を立てて改善します。

よくある失敗パターン6つ

UGCマーケティング手法は強力ですが、設計を誤ると効果が出ません。中小企業がよく陥る失敗パターンを6つ整理しました。

失敗1:戦略レイヤーをスキップする

ULSSAS・SIPS・DECAXのどれを採用するか決めずに、Instagramキャンペーンから始める。結果、各段階のKPIが立てられず、施策の改善ができない状態に。

失敗2:UGCの「量」だけ追う

キャンペーンでUGCを大量に集めることに成功しても、ULSSASのLike以降の段階が回らず、購買に繋がらない。UGCの「質」とCTR・購買率まで追わないと意味がない。

失敗3:単発キャンペーンで終わる

ハッシュタグキャンペーンを1回やってUGCが集まるが、終了後に急減。ULSSASの循環構造を作れず、施策が資産化しない。月額継続契約のマイクロインフルエンサーと組み合わせて、UGCの継続発生を確保する必要がある。

失敗4:二次利用の許諾を取らず炎上

ユーザーが投稿したUGCを勝手にスクショして自社広告で使い、著作権侵害で炎上。SNSで発信されているからといって自由に使えるわけではない。ステマ規制・PR表記ガイドと合わせて社内ガイドライン整備が必須。

失敗5:S2(Google検索)の受け皿が弱い

SNSで話題になりUGC・SNS検索は伸びたが、Google検索した時に公式サイトが古い・SEO最適化されていないため、Action段階で離脱。SNS施策とWebサイト改善はセットで進める必要がある。

失敗6:マイクロインフルエンサー選定の質が低い

「フォロワー数だけ」で起用した結果、ジャンル不一致で追随UGCが生まれない。詳細はインフルエンサーキャスティング会社の選び方を参照。

中小企業の段階別ステップ

UGCマーケティング手法を中小企業が実装する場合、いきなりULSSAS全段階の運用を目指すと挫折します。段階別に進めるステップを整理しました。

フェーズ1:UGCを発生させる仕組みを1つ作る(1〜3ヶ月)

マイクロインフルエンサー3〜5名の月額継続契約で、UGCの最初の波を作る。月予算15〜30万円目安。インフルエンサー広告の費用相場でプラン別の予算感をご確認ください。

フェーズ2:UGCを蓄積・二次利用する仕組みを作る(3〜6ヶ月)

許諾フローを整備し、自社サイト・公式SNS・広告クリエイティブにUGCを活用。同時にハッシュタグキャンペーンを四半期に1回程度実施。

フェーズ3:ULSSAS全段階のKPI運用に移行(6ヶ月〜)

SNS Insights・Google Search Console・EC購買データを統合し、ULSSAS各段階の月次KPIを運用。詰まっている段階を特定して改善サイクルを回す。

最後に

UGCマーケティング手法の本質は、「広告投資を一過性の費用ではなく、SNS上に蓄積する資産に変える」ことです。ULSSASの循環構造を理解した上で、自社の商材・予算・SNS特性に合わせた起点を選び、KPIを段階別に設計する。この設計力が、UGCマーケティング手法を成功に導く分岐点になります。

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