この記事は、UGCシリーズの中で「手法の選び方」に特化した記事です。UGCマーケティングには、インフルエンサー起用、ハッシュタグキャンペーン、体験設計、レビュー依頼、UGCの広告活用など複数の手法がありますが、「どれが正解か」は目的と自社の状況によって変わります。本記事では、認知・検討・購入・リピートといった目的ごとに、どの手法を選び、どう組み合わせるかを判断表の形で整理します。UGCを起点とした購買プロセス(ULSSAS)の詳細は専門記事に譲り、ここでは手法選びに必要な範囲の要約にとどめます。

UGCの定義と全体像はUGC(ユーザー生成コンテンツ)とは?、用語の整理はCGMとUGCの違いとは?、ULSSASの詳細はULSSAS(ウルサス)とは?をご参照ください。

目次
  1. UGCマーケティング手法の全体マップ
  2. 前提となる購買プロセス(ULSSASの要約)
  3. 目的別:UGCマーケティング手法の選び方
  4. 主要な手法ごとの特徴と必要リソース
  5. データで見る:手法選びの前提になるSNS環境
  6. SNS別の手法の向き不向き
  7. ULSSAS / SIPS / DECAX の使い分け
  8. 手法ごとの効果の見方(KPI設計)
  9. よくある失敗パターン
  10. 中小企業の段階別ステップ

UGCマーケティング手法の全体マップ

UGCを起点としたマーケティングは、大きく3つのレイヤーで考えると整理しやすくなります。上のレイヤーで決めたことに基づいて、下のレイヤーの施策を選ぶ構造です。

レイヤー決めること代表的なアウトプット
① 目的レイヤーUGCで何を改善したいか(認知・検討・購入・リピート)目的とKPIの定義
② 手法レイヤー目的に合うUGCの生み方・使い方の選択インフルエンサー起用/ハッシュタグ企画/体験設計/レビュー依頼/UGC広告
③ 実行レイヤーSNS別の具体施策、収集・許諾、効果測定投稿企画、募集要項、レポート

よくあるつまずきは、③の実行レイヤーから始めてしまうことです。「Instagramでハッシュタグキャンペーンをやろう」と施策ありきで始めると、UGCが集まっても何の改善につながったのかが分からなくなります。まず①で目的を決め、②で手法を選ぶという順序を意識してください。③のうち収集・許諾の実務はUGC収集の仕組みで解説しています。

前提となる購買プロセス(ULSSASの要約)

手法を選ぶ前提として、UGCが購買にどう関わるかを押さえておきます。代表的なモデルが、株式会社ホットリンクが提唱したULSSAS(ウルサス)です。

段階内容(要約)
U:UGC誰かの投稿が起点になる
L:Like投稿を見た人が「いいね」や保存で反応する
S:Search1SNS内で商品名などを検索する
S:Search2Google等で公式サイトや詳細を確認する
A:Action購入・来店・申込などの行動
S:Spread購入者が発信し、次のUGCが生まれる

手法選びの観点で重要なのは、UGCの手法によって効きやすい段階が異なるという点です。たとえば、インフルエンサー起用はU(起点づくり)に、レビュー依頼はS(検索時の判断材料)やSpreadに効きやすい、というように整理できます。各段階の詳しい解説や、AIDMA・AISASとの違いはULSSAS(ウルサス)とは?UGCを軸にした購買プロセスをご覧ください。

目的別:UGCマーケティング手法の選び方

ここが本記事の中心です。「UGCで何を改善したいか」によって、優先すべき手法は変わります。次の判断表で、自社の目的に近い行を確認してください。

目的よくある状況優先したい手法組み合わせたい手法
認知を広げたい商品の存在が知られていない/新商品の発売インフルエンサー起用(複数名)ハッシュタグキャンペーン
検討時の判断材料を増やしたいSNSで検索しても投稿が少ない/比較で負けている購入者へのレビュー・投稿依頼常設ハッシュタグ、公式アカウントでの紹介
購入率を上げたい商品ページまで来るが購入に至らない許諾済みUGCの商品ページ掲載UGCを使った広告クリエイティブ
来店・体験を増やしたい店舗・施設・イベント型の事業撮りたくなる体験の設計地域のマイクロインフルエンサー起用
リピート・ファン化を進めたい既存顧客はいるが発信が少ない公式アカウントからの反応・紹介購入者限定の投稿企画
広告の効率を改善したい制作した広告の反応が伸びないUGC風・UGC活用の広告クリエイティブインフルエンサー投稿の二次利用(許諾が前提)

判断のコツは、目的を1つに絞ってから手法を選ぶことです。「認知も購入率もリピートも」と欲張ると、手法が分散して効果の検証ができなくなります。最初の3〜6か月は主目的を1つ決め、残りは補助的な位置づけにするのが現実的です。

POINT

目的が決めきれない場合は、「自社名や商品名でSNS検索したときに、第三者の投稿がどれくらい見つかるか」を確認してみてください。ほとんど見つからないなら「起点づくり(認知・投稿の発生)」、ある程度あるなら「活用(購入率・広告)」が優先課題である可能性が高いと考えられます。

主要な手法ごとの特徴と必要リソース

同じ目的に合う手法でも、社内で必要になるリソースが異なります。自社の体制で無理なく回せるかどうかも、選定の重要な基準です。

手法強み弱み・注意点主に必要なリソース
インフルエンサー起用起点となる投稿を計画的に作れる依頼型のためPR表記の管理が必要候補選定・連絡・進行管理(外部委託も可)
ハッシュタグキャンペーン短期間に多くの投稿を集めやすい終了後に投稿が減りやすい。景品の条件設定に注意企画・応募要項作成・集計
体験設計一度作ると継続的に投稿が生まれる初期の設計・制作に時間がかかる商品・店舗・パッケージの企画部門との連携
レビュー・投稿依頼購入者の実体験に基づく投稿が集まる依頼の頻度・文面によっては負担感を与える購入後メールなどの仕組み
UGCの二次利用(サイト・広告)既存のUGCを購入の後押しに使える許諾の取得と期限管理が必須許諾フロー・素材管理

社内リソースが少ない場合は、進行管理を外部に任せられるインフルエンサー起用や、一度仕組みを作れば回り続けるレビュー依頼から始めると負担を抑えやすくなります。具体的な進め方の事例はUGCマーケティングの成功事例と共通点で紹介しています。

データで見る:手法選びの前提になるSNS環境

どの手法を選ぶかは、ターゲットがどのSNSを使っているか、どんな形式のコンテンツが伸びているかにも左右されます。手法選びに関係する数値を2つ紹介します。

指標数値出典
年代別のSNS利用率TikTokは10代で65.7%と全年代で最高、Xは20代で78.0%と最高。Instagramは女性57.5%・男性47.6%総務省
縦型動画広告の市場規模2025年に2,049億円(前年比155.9%)。動画広告市場全体は8,855億円(前年比122.2%)サイバーエージェント

10代が主なターゲットならTikTok、20代ならXも含めて検討する、というように、年代によって「UGCが生まれやすく、見られやすいSNS」は変わります。また、縦型動画広告の市場が大きく伸びていることから、縦型動画のUGCを許諾を得て広告に活用する手法は、今後も検討の価値が高いと考えられます。詳しくは年代別SNS利用率データ、動画広告・ショート動画の市場データをご覧ください。

SNS別の手法の向き不向き

同じ手法でも、SNSによって実行の仕方や注意点が変わります。

SNSUGC主形態向いている手法注意点
Instagramフィード写真・リールハッシュタグキャンペーン+ストーリーズでの紹介紹介する投稿を選ばずに大量に再シェアすると、公式アカウントの統一感が損なわれる
TikTok動画レビュー・開封・ハウツーインフルエンサー起用、ハッシュタグ企画動画で魅力が伝わりにくい商材は他のSNSと併用する
Xテキスト感想・引用引用による紹介、声の分析否定的な投稿への対応方針を事前に決める
YouTube長尺レビュー動画商品提供によるレビュー依頼、商品ページへの埋め込み依頼型の場合はPR表記を徹底する
Threadsテキスト体験談公式アカウントによる会話への参加Xとは利用者の雰囲気が異なるため、同じ投稿の流用は避ける

ULSSAS / SIPS / DECAX の使い分け

UGCを軸に考える際はULSSASがよく使われますが、商材によっては他のモデルのほうが当てはまる場合もあります。手法選びの補助線として、使い分けの目安を示します。

モデル起点当てはまりやすい商材当てはまりにくい商材
ULSSASUGCSNSで見た目や使用感が伝わる消費財(コスメ・食品・アパレル・観光)検討期間の長い高単価商材(BtoB SaaS・金融など)
SIPS共感(Sympathize)理念や世界観への共感が購入理由になる商材機能差で選ばれる実用品
DECAX発見(Discovery)記事・解説コンテンツで検討が進むBtoB・教育・士業衝動的に買われる商材

多くの場合、主となるモデルを1つ選び、補助的に他のモデルの考え方を取り入れます。各モデルの詳しい比較はULSSASの解説記事で扱っています。

手法ごとの効果の見方(KPI設計)

手法を選んだら、その手法が効いているかを判断する指標を決めます。目標値は業種・商材・規模によって大きく異なるため、他社の数字を当てはめるのではなく、施策開始前の自社の数値を基準にして、変化を見るのが基本です。

手法主に見る指標確認する変化
インフルエンサー起用投稿のリーチ・保存数、指名検索数起用後に自社名・商品名の検索が増えたか
ハッシュタグキャンペーン応募投稿数、キャンペーン後の常設ハッシュタグ投稿数終了後も投稿が一定数続いているか
体験設計店舗・施設に関する投稿数、地図サービスの口コミ数施策前と比べて自然発生の投稿が増えたか
レビュー・投稿依頼依頼に対する投稿率、レビュー件数依頼文やタイミングの変更で投稿率が変わるか
UGCの二次利用商品ページの購入率、広告のクリック率UGC掲載前後、UGC素材と通常素材で差があるか

すべての指標を同時に追う必要はありません。主目的に対応する指標を1〜2個に絞ることで、手法を続けるか切り替えるかの判断がしやすくなります。効果測定の全般的な考え方は効果測定とKPI設計も参考にしてください。

よくある失敗パターン

失敗1:目的を決めずに施策から始める

「とりあえずキャンペーン」から始めると、何が改善したかを判断できず、次の手を打てなくなります。

失敗2:UGCの「量」だけを追う

投稿数が増えても、検索や購入につながらなければ目的は達成できません。主目的に対応する指標まで追いかけることが必要です。

失敗3:単発の企画で終わる

ハッシュタグキャンペーンは終了後に投稿が減りやすい手法です。継続的なインフルエンサー起用やレビュー依頼など、平常時の手法と組み合わせることが大切です。

失敗4:二次利用の許諾を取らずに使う

SNSに公開された投稿でも、自社の広告やサイトで使うには原則として許諾が必要です。ステマ規制・PR表記ガイドと合わせて、社内ルールを整備してください。

失敗5:検索したときの受け皿が弱い

SNSで話題になっても、公式サイトの情報が古い・見つからないと購入前に離脱されます。SNSの手法とWebサイトの整備はセットで考えます。

失敗6:インフルエンサーの選定基準が曖昧

フォロワー数だけで選ぶと、ジャンルや読者層が合わず、後に続く投稿が生まれにくくなります。選定の考え方はインフルエンサーキャスティング会社の選び方を参照してください。

中小企業の段階別ステップ

中小企業がUGCマーケティングを始める場合、最初から複数の手法を並行すると運用が回らなくなりがちです。段階的に進める例を示します。

フェーズ1:主目的を決め、手法を1つ選ぶ(1〜3か月)

目的別の判断表から主目的に合う手法を1つ選びます。起点となる投稿が少ない場合は、マイクロインフルエンサー(マイクロインフルエンサーとは?)の起用から始めるのが一般的です。予算感はインフルエンサー広告の費用相場をご確認ください。

フェーズ2:収集・二次利用の仕組みを整える(3〜6か月)

許諾フローを整備し、集まったUGCを商品ページや公式SNSで活用します。必要に応じてハッシュタグ企画を組み合わせます。

フェーズ3:手法を組み合わせ、指標で見直す(6か月〜)

主目的の指標を見ながら、補助的な手法を追加・入れ替えます。効果が出ている手法に予算を寄せていきます。

まとめ

UGCマーケティングの手法選びで大切なのは、「どの手法が優れているか」ではなく「自社の目的に合う手法はどれか」を考えることです。認知ならインフルエンサー起用、検討時の判断材料ならレビュー依頼、購入率なら許諾済みUGCの掲載、というように、目的と手法の対応を判断表で確認し、社内リソースで回せるものから始めてください。

効果は他社の数字ではなく、施策前の自社の数値との比較で判断します。ULSSASなど購買プロセスの詳細はULSSASの解説記事、収集の実務はUGC収集の仕組みをあわせてご覧ください。SIGNAL BASE では、マイクロインフルエンサーの継続起用を軸に、UGCの起点づくりを月額制で支援しています。