この記事は、UGCシリーズの中で「手法の選び方」に特化した記事です。UGCマーケティングには、インフルエンサー起用、ハッシュタグキャンペーン、体験設計、レビュー依頼、UGCの広告活用など複数の手法がありますが、「どれが正解か」は目的と自社の状況によって変わります。本記事では、認知・検討・購入・リピートといった目的ごとに、どの手法を選び、どう組み合わせるかを判断表の形で整理します。UGCを起点とした購買プロセス(ULSSAS)の詳細は専門記事に譲り、ここでは手法選びに必要な範囲の要約にとどめます。
UGCの定義と全体像はUGC(ユーザー生成コンテンツ)とは?、用語の整理はCGMとUGCの違いとは?、ULSSASの詳細はULSSAS(ウルサス)とは?をご参照ください。
UGCマーケティング手法の全体マップ
UGCを起点としたマーケティングは、大きく3つのレイヤーで考えると整理しやすくなります。上のレイヤーで決めたことに基づいて、下のレイヤーの施策を選ぶ構造です。
| レイヤー | 決めること | 代表的なアウトプット |
|---|---|---|
| ① 目的レイヤー | UGCで何を改善したいか(認知・検討・購入・リピート) | 目的とKPIの定義 |
| ② 手法レイヤー | 目的に合うUGCの生み方・使い方の選択 | インフルエンサー起用/ハッシュタグ企画/体験設計/レビュー依頼/UGC広告 |
| ③ 実行レイヤー | SNS別の具体施策、収集・許諾、効果測定 | 投稿企画、募集要項、レポート |
よくあるつまずきは、③の実行レイヤーから始めてしまうことです。「Instagramでハッシュタグキャンペーンをやろう」と施策ありきで始めると、UGCが集まっても何の改善につながったのかが分からなくなります。まず①で目的を決め、②で手法を選ぶという順序を意識してください。③のうち収集・許諾の実務はUGC収集の仕組みで解説しています。
前提となる購買プロセス(ULSSASの要約)
手法を選ぶ前提として、UGCが購買にどう関わるかを押さえておきます。代表的なモデルが、株式会社ホットリンクが提唱したULSSAS(ウルサス)です。
| 段階 | 内容(要約) |
|---|---|
| U:UGC | 誰かの投稿が起点になる |
| L:Like | 投稿を見た人が「いいね」や保存で反応する |
| S:Search1 | SNS内で商品名などを検索する |
| S:Search2 | Google等で公式サイトや詳細を確認する |
| A:Action | 購入・来店・申込などの行動 |
| S:Spread | 購入者が発信し、次のUGCが生まれる |
手法選びの観点で重要なのは、UGCの手法によって効きやすい段階が異なるという点です。たとえば、インフルエンサー起用はU(起点づくり)に、レビュー依頼はS(検索時の判断材料)やSpreadに効きやすい、というように整理できます。各段階の詳しい解説や、AIDMA・AISASとの違いはULSSAS(ウルサス)とは?UGCを軸にした購買プロセスをご覧ください。
目的別:UGCマーケティング手法の選び方
ここが本記事の中心です。「UGCで何を改善したいか」によって、優先すべき手法は変わります。次の判断表で、自社の目的に近い行を確認してください。
| 目的 | よくある状況 | 優先したい手法 | 組み合わせたい手法 |
|---|---|---|---|
| 認知を広げたい | 商品の存在が知られていない/新商品の発売 | インフルエンサー起用(複数名) | ハッシュタグキャンペーン |
| 検討時の判断材料を増やしたい | SNSで検索しても投稿が少ない/比較で負けている | 購入者へのレビュー・投稿依頼 | 常設ハッシュタグ、公式アカウントでの紹介 |
| 購入率を上げたい | 商品ページまで来るが購入に至らない | 許諾済みUGCの商品ページ掲載 | UGCを使った広告クリエイティブ |
| 来店・体験を増やしたい | 店舗・施設・イベント型の事業 | 撮りたくなる体験の設計 | 地域のマイクロインフルエンサー起用 |
| リピート・ファン化を進めたい | 既存顧客はいるが発信が少ない | 公式アカウントからの反応・紹介 | 購入者限定の投稿企画 |
| 広告の効率を改善したい | 制作した広告の反応が伸びない | UGC風・UGC活用の広告クリエイティブ | インフルエンサー投稿の二次利用(許諾が前提) |
判断のコツは、目的を1つに絞ってから手法を選ぶことです。「認知も購入率もリピートも」と欲張ると、手法が分散して効果の検証ができなくなります。最初の3〜6か月は主目的を1つ決め、残りは補助的な位置づけにするのが現実的です。
目的が決めきれない場合は、「自社名や商品名でSNS検索したときに、第三者の投稿がどれくらい見つかるか」を確認してみてください。ほとんど見つからないなら「起点づくり(認知・投稿の発生)」、ある程度あるなら「活用(購入率・広告)」が優先課題である可能性が高いと考えられます。
主要な手法ごとの特徴と必要リソース
同じ目的に合う手法でも、社内で必要になるリソースが異なります。自社の体制で無理なく回せるかどうかも、選定の重要な基準です。
| 手法 | 強み | 弱み・注意点 | 主に必要なリソース |
|---|---|---|---|
| インフルエンサー起用 | 起点となる投稿を計画的に作れる | 依頼型のためPR表記の管理が必要 | 候補選定・連絡・進行管理(外部委託も可) |
| ハッシュタグキャンペーン | 短期間に多くの投稿を集めやすい | 終了後に投稿が減りやすい。景品の条件設定に注意 | 企画・応募要項作成・集計 |
| 体験設計 | 一度作ると継続的に投稿が生まれる | 初期の設計・制作に時間がかかる | 商品・店舗・パッケージの企画部門との連携 |
| レビュー・投稿依頼 | 購入者の実体験に基づく投稿が集まる | 依頼の頻度・文面によっては負担感を与える | 購入後メールなどの仕組み |
| UGCの二次利用(サイト・広告) | 既存のUGCを購入の後押しに使える | 許諾の取得と期限管理が必須 | 許諾フロー・素材管理 |
社内リソースが少ない場合は、進行管理を外部に任せられるインフルエンサー起用や、一度仕組みを作れば回り続けるレビュー依頼から始めると負担を抑えやすくなります。具体的な進め方の事例はUGCマーケティングの成功事例と共通点で紹介しています。
データで見る:手法選びの前提になるSNS環境
どの手法を選ぶかは、ターゲットがどのSNSを使っているか、どんな形式のコンテンツが伸びているかにも左右されます。手法選びに関係する数値を2つ紹介します。
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 年代別のSNS利用率 | TikTokは10代で65.7%と全年代で最高、Xは20代で78.0%と最高。Instagramは女性57.5%・男性47.6% | 総務省 |
| 縦型動画広告の市場規模 | 2025年に2,049億円(前年比155.9%)。動画広告市場全体は8,855億円(前年比122.2%) | サイバーエージェント |
10代が主なターゲットならTikTok、20代ならXも含めて検討する、というように、年代によって「UGCが生まれやすく、見られやすいSNS」は変わります。また、縦型動画広告の市場が大きく伸びていることから、縦型動画のUGCを許諾を得て広告に活用する手法は、今後も検討の価値が高いと考えられます。詳しくは年代別SNS利用率データ、動画広告・ショート動画の市場データをご覧ください。
SNS別の手法の向き不向き
同じ手法でも、SNSによって実行の仕方や注意点が変わります。
| SNS | UGC主形態 | 向いている手法 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| フィード写真・リール | ハッシュタグキャンペーン+ストーリーズでの紹介 | 紹介する投稿を選ばずに大量に再シェアすると、公式アカウントの統一感が損なわれる | |
| TikTok | 動画レビュー・開封・ハウツー | インフルエンサー起用、ハッシュタグ企画 | 動画で魅力が伝わりにくい商材は他のSNSと併用する |
| X | テキスト感想・引用 | 引用による紹介、声の分析 | 否定的な投稿への対応方針を事前に決める |
| YouTube | 長尺レビュー動画 | 商品提供によるレビュー依頼、商品ページへの埋め込み | 依頼型の場合はPR表記を徹底する |
| Threads | テキスト体験談 | 公式アカウントによる会話への参加 | Xとは利用者の雰囲気が異なるため、同じ投稿の流用は避ける |
ULSSAS / SIPS / DECAX の使い分け
UGCを軸に考える際はULSSASがよく使われますが、商材によっては他のモデルのほうが当てはまる場合もあります。手法選びの補助線として、使い分けの目安を示します。
| モデル | 起点 | 当てはまりやすい商材 | 当てはまりにくい商材 |
|---|---|---|---|
| ULSSAS | UGC | SNSで見た目や使用感が伝わる消費財(コスメ・食品・アパレル・観光) | 検討期間の長い高単価商材(BtoB SaaS・金融など) |
| SIPS | 共感(Sympathize) | 理念や世界観への共感が購入理由になる商材 | 機能差で選ばれる実用品 |
| DECAX | 発見(Discovery) | 記事・解説コンテンツで検討が進むBtoB・教育・士業 | 衝動的に買われる商材 |
多くの場合、主となるモデルを1つ選び、補助的に他のモデルの考え方を取り入れます。各モデルの詳しい比較はULSSASの解説記事で扱っています。
手法ごとの効果の見方(KPI設計)
手法を選んだら、その手法が効いているかを判断する指標を決めます。目標値は業種・商材・規模によって大きく異なるため、他社の数字を当てはめるのではなく、施策開始前の自社の数値を基準にして、変化を見るのが基本です。
| 手法 | 主に見る指標 | 確認する変化 |
|---|---|---|
| インフルエンサー起用 | 投稿のリーチ・保存数、指名検索数 | 起用後に自社名・商品名の検索が増えたか |
| ハッシュタグキャンペーン | 応募投稿数、キャンペーン後の常設ハッシュタグ投稿数 | 終了後も投稿が一定数続いているか |
| 体験設計 | 店舗・施設に関する投稿数、地図サービスの口コミ数 | 施策前と比べて自然発生の投稿が増えたか |
| レビュー・投稿依頼 | 依頼に対する投稿率、レビュー件数 | 依頼文やタイミングの変更で投稿率が変わるか |
| UGCの二次利用 | 商品ページの購入率、広告のクリック率 | UGC掲載前後、UGC素材と通常素材で差があるか |
すべての指標を同時に追う必要はありません。主目的に対応する指標を1〜2個に絞ることで、手法を続けるか切り替えるかの判断がしやすくなります。効果測定の全般的な考え方は効果測定とKPI設計も参考にしてください。
よくある失敗パターン
失敗1:目的を決めずに施策から始める
「とりあえずキャンペーン」から始めると、何が改善したかを判断できず、次の手を打てなくなります。
失敗2:UGCの「量」だけを追う
投稿数が増えても、検索や購入につながらなければ目的は達成できません。主目的に対応する指標まで追いかけることが必要です。
失敗3:単発の企画で終わる
ハッシュタグキャンペーンは終了後に投稿が減りやすい手法です。継続的なインフルエンサー起用やレビュー依頼など、平常時の手法と組み合わせることが大切です。
失敗4:二次利用の許諾を取らずに使う
SNSに公開された投稿でも、自社の広告やサイトで使うには原則として許諾が必要です。ステマ規制・PR表記ガイドと合わせて、社内ルールを整備してください。
失敗5:検索したときの受け皿が弱い
SNSで話題になっても、公式サイトの情報が古い・見つからないと購入前に離脱されます。SNSの手法とWebサイトの整備はセットで考えます。
失敗6:インフルエンサーの選定基準が曖昧
フォロワー数だけで選ぶと、ジャンルや読者層が合わず、後に続く投稿が生まれにくくなります。選定の考え方はインフルエンサーキャスティング会社の選び方を参照してください。
中小企業の段階別ステップ
中小企業がUGCマーケティングを始める場合、最初から複数の手法を並行すると運用が回らなくなりがちです。段階的に進める例を示します。
フェーズ1:主目的を決め、手法を1つ選ぶ(1〜3か月)
目的別の判断表から主目的に合う手法を1つ選びます。起点となる投稿が少ない場合は、マイクロインフルエンサー(マイクロインフルエンサーとは?)の起用から始めるのが一般的です。予算感はインフルエンサー広告の費用相場をご確認ください。
フェーズ2:収集・二次利用の仕組みを整える(3〜6か月)
許諾フローを整備し、集まったUGCを商品ページや公式SNSで活用します。必要に応じてハッシュタグ企画を組み合わせます。
フェーズ3:手法を組み合わせ、指標で見直す(6か月〜)
主目的の指標を見ながら、補助的な手法を追加・入れ替えます。効果が出ている手法に予算を寄せていきます。
まとめ
UGCマーケティングの手法選びで大切なのは、「どの手法が優れているか」ではなく「自社の目的に合う手法はどれか」を考えることです。認知ならインフルエンサー起用、検討時の判断材料ならレビュー依頼、購入率なら許諾済みUGCの掲載、というように、目的と手法の対応を判断表で確認し、社内リソースで回せるものから始めてください。
効果は他社の数字ではなく、施策前の自社の数値との比較で判断します。ULSSASなど購買プロセスの詳細はULSSASの解説記事、収集の実務はUGC収集の仕組みをあわせてご覧ください。SIGNAL BASE では、マイクロインフルエンサーの継続起用を軸に、UGCの起点づくりを月額制で支援しています。