この記事は、UGCシリーズの中で「収集の実務」に特化した記事です。UGCの定義や、どの手法を選ぶべきかといった上流の話ではなく、実際にUGCを集める担当者が手を動かすための内容——募集企画の設計、ハッシュタグの決め方、投稿の見つけ方、許諾フローの回し方、記録の残し方——を、チェック表と手順の形で整理しています。「UGCを集めることになったが、明日から何をすればよいか」という方に向けた記事です。

UGCの定義と全体像はUGC(ユーザー生成コンテンツ)とは?、目的に合った手法の選び方はUGCマーケティング手法の選び方、許諾依頼の文面テンプレートはUGC利用許諾の取り方を併せてご参照ください。

目次
  1. UGC収集の5段階プロセス
  2. 自然発生型と募集型の使い分け
  3. 募集型キャンペーンの設計シート
  4. ハッシュタグ設計の実務
  5. UGCを「発生させる」具体的な仕組み
  6. UGCを「検出する」方法と検索式
  7. 許諾フローを業務に組み込む
  8. UGCの蓄積とツールの考え方
  9. 業種別の収集パターン
  10. UGC収集で陥りやすい落とし穴

UGC収集の5段階プロセス

UGC収集は単一の作業ではなく、以下の5段階で構成される連続したプロセスです。どこか1つが止まると、後ろの工程も止まってしまいます。

段階業務内容主担当
① 発生促進UGCが生まれるきっかけ(募集企画・体験設計など)を作るマーケティング
② 検出自社商品・サービスに関するUGCをSNS上で見つけるマーケティング・カスタマーサポート
③ 許諾取得投稿者本人から二次利用の許諾を得るマーケティング(必要に応じて法務)
④ 蓄積・整理許諾済みUGCを社内で検索できる状態で保管するマーケティング
⑤ 二次利用自社サイト・広告・公式SNSで活用するマーケティング・広告

このうち、多くの企業で滞りやすいのが②検出と③許諾取得です。人手で運用すると、件数が増えるほど確認・連絡の工数がかさみます。まずは本記事の手順で運用の型を作り、件数が増えてきた段階でツールの導入を検討するのが現実的な順序です。

自然発生型と募集型の使い分け

UGC収集には、大きく2つのアプローチがあります。

アプローチ仕組み得意な場面集まり方
自然発生型自発的に生まれたUGCを検出して収集すでにブランド認知がある/既存顧客が多い緩やか・継続的
募集型キャンペーン・告知で投稿を意図的に募る新商品の発売時/短期間で素材を集めたい期間中に集中

一般的には、「普段は自然発生型で継続的に拾い、節目で募集型を実施する」という組み合わせが扱いやすい形です。募集型は設計次第で集まる投稿の質が大きく変わるため、次の章の設計シートを使って事前に条件を固めておきましょう。

募集型キャンペーンの設計シート

募集型のUGCキャンペーンは、応募要項(募集ページや投稿で告知する条件)の設計がすべてと言っても過言ではありません。要項が曖昧だと、使えない投稿ばかりが集まったり、後から許諾で揉めたりします。告知前に次の項目を埋めてください。

項目決める内容設計のポイント
目的集めたUGCを何に使うか「商品ページ用の使用写真」など用途を先に決めると、募集する投稿の形式が決まる
対象SNSInstagram/TikTok/Xなど用途に合う形式(写真・縦型動画・テキスト)が投稿されるSNSを選ぶ
参加方法指定ハッシュタグ/公式アカウントのフォロー/メンション参加手順は少ないほど参加しやすい。条件を増やしすぎない
投稿してほしい内容写真の構図、使用シーン、動画の長さなど例となる投稿を1〜2件示すと、意図に沿った投稿が集まりやすい
期間開始日・終了日終了後に集計・連絡する期間も含めてスケジュールを組む
特典抽選プレゼント、クーポンなど景品表示法の景品規制に関わる場合があるため、条件は事前に確認する
二次利用の扱い応募投稿を企業が利用する可能性と範囲要項に明記したうえで、実際に使う投稿は個別にも確認するのが丁寧
禁止事項他人の写り込み、他社商品の比較表現、虚偽の感想など肖像権や表示のトラブルを防ぐため、応募前に伝える
PR表記特典付き投稿の表記ルール対価を伴う投稿は広告として扱われる可能性がある。表記方法を要項で案内する
注意

特典の設計や応募要項の表記は、景品表示法やステルスマーケティング規制に関わる場合があります。ここで挙げた内容は一般論です。具体的な条件設定は、消費者庁の公表資料を確認したうえで、必要に応じて弁護士等の専門家にご相談ください。表記ルールの概要はステマ規制・PR表記ガイドでも整理しています。

ハッシュタグ設計の実務

UGC収集の土台になるのがハッシュタグです。ハッシュタグは「投稿してもらう合図」であると同時に、「後から投稿を探すための検索キー」でもあります。次のチェック表で候補を評価してから決めましょう。

チェック項目確認する内容
固有性既に他の意味で大量に使われていないか(事前にSNSで検索する)
覚えやすさブランド名+一般語など、短く入力しやすいか
表記揺れカタカナ/英字/ひらがなで揺れやすくないか。揺れる場合は検索対象を複数登録する
用途との対応常設用(ブランド全体)と企画用(期間限定)を分けているか
ネガティブな読まれ方皮肉や揶揄に使われやすい語を含んでいないか
告知場所パッケージ・同梱物・店頭・公式SNS・購入後メールのどこで伝えるか

実務では、常設ハッシュタグ(例:#ブランド名)を1つと、企画ごとの期間限定ハッシュタグを使い分けると、平常時と企画時の件数を分けて把握できます。常設ハッシュタグは長く使うものなので、一度決めたら安易に変えないことも大切です。

UGCを「発生させる」具体的な仕組み

募集企画以外にも、平常時の自然発生を増やす仕組みがあります。

仕組み1:購入後フォローでの投稿依頼

商品到着後やサービス利用後のフォローメールに、「よろしければSNSで感想をお聞かせください」と一言と常設ハッシュタグを添えます。明示的にお願いされることで、投稿しようか迷っていた方が行動しやすくなります。

仕組み2:パッケージ・店内でのハッシュタグ告知

商品パッケージや同梱カード、店内のPOPにハッシュタグを載せます。商品を手に取った瞬間に目に入る場所で伝えるのがポイントです。

仕組み3:マイクロインフルエンサー起用で「最初の投稿」を作る

UGCがほとんどない状態から自然発生を待つのは時間がかかります。マイクロインフルエンサーに依頼して最初の投稿を作ると、ハッシュタグの使い方の見本にもなります。起用の考え方はマイクロインフルエンサーとは?で解説しています。

仕組み4:撮りたくなる体験の設計

商品・店舗・サービスの中に「撮影したくなる瞬間」を意図的に作ります。撮影スポットの設置や、開封時の見せ方の工夫などが代表例です。

仕組み5:公式アカウントからの反応

投稿してくれた方に公式アカウントから「いいね」やコメントで反応します。「公式に見てもらえた」という体験が、次の投稿のきっかけになります。

UGCを「検出する」方法と検索式

投稿されたUGCを見つける作業は、検索条件をあらかじめ決めて定期的に回すのが基本です。

SNS検索パターン例
Instagramハッシュタグ検索/キーワード検索/メンション確認#ブランド名 / ブランド名 / @公式アカウント
TikTokハッシュタグ検索/商品名キーワード#商品名 / 「商品名 レビュー」
Xキーワード検索/高度な検索"商品名" lang:ja(反応数などの条件で絞り込み)
YouTube商品名キーワード検索商品名+「レビュー」「比較」「使ってみた」
口コミサイトサイト内検索食べログ/ホットペッパー/Googleマップの口コミ

許諾フローを業務に組み込む

UGCを自社サイト・広告・チラシなどで再利用する場合は、原則として投稿者本人の許諾が必要です。SNSの利用規約は、企業が投稿を自由に転用することまでを認めるものではない点に注意してください。許諾は「気づいた人がその都度DMする」のではなく、担当・期限・記録を決めた業務フローとして回すことが大切です。

許諾フローの標準手順

手順やること記録すること
1. 候補選定使いたい投稿を選び、用途(サイト/広告/SNS)を決める投稿URL・投稿者・想定用途
2. 事前確認他人の顔の写り込み、他社ロゴ、薬機法等に触れる表現がないか確認確認者・確認日
3. 依頼送付用途・媒体・期間・お礼の有無を明記して依頼する依頼日・依頼文の版
4. 回答受領許諾の回答をスクリーンショット等で保存する許諾日・許諾範囲・証跡の保存場所
5. 利用開始許諾範囲内で掲載し、クレジット表記のルールを守る掲載先・掲載開始日
6. 期限管理利用期限が近づいたら掲載終了か延長依頼かを判断する終了日・延長の有無

依頼文には、少なくとも「使用目的」「使用媒体」「使用期間」「お礼の有無」を記載します。簡単な文例は次のとおりです。

依頼文の例(Instagram想定)

〇〇様、はじめまして。〇〇株式会社の公式アカウントです。
弊社商品「〇〇」をご紹介くださり、ありがとうございます。差し支えなければ、こちらの投稿の写真を弊社の公式サイト等でご紹介させていただけないでしょうか。

【使用目的】 公式サイトのお客様の声コーナーへの掲載
【使用媒体】 公式サイト/公式Instagram
【使用期間】 〇年〇月〇日〜〇年〇月〇日
【お礼】 〇〇をお送りいたします(任意)

ご了承いただける場合は、このメッセージにご返信ください。

用途別(サイト掲載・広告利用・改変を伴う利用など)の文面テンプレートや、許諾管理表の詳しい作り方はUGC利用許諾の取り方|依頼文テンプレートと許諾管理の実務にまとめています。著作権・肖像権の一般的な考え方はUGCの著作権・二次利用ガイドをご覧ください。いずれも一般論であり、個別の判断が必要な場合は弁護士等の専門家にご確認ください。

UGCの蓄積とツールの考え方

許諾を取ったUGCは、社内の誰でも検索・取り出しができる状態で保管します。ここを整えないと、集めたUGCが担当者個人のPCに眠ったままになります。

保管方法向いている状況記録しておきたい項目
クラウドストレージ(フォルダ管理)件数が少ない立ち上げ期年月・SNS・商品別のフォルダ名
スプレッドシート・データベース件数が増え、許諾期限の管理が必要になった段階投稿URL・投稿者・許諾範囲・期限・使用履歴
専用のUGC管理ツール検出・許諾・掲載をまとめて効率化したい段階ツール上で一元管理

ツールは、運用の型ができてから導入するほうが失敗しにくい傾向があります。ツールの種類と選び方はUGC活用ツールおすすめ比較で詳しく整理しています。費用は機能や規模によって大きく異なるため、複数社から見積もりを取って比較してください。

業種別の収集パターン

業種によって、UGCが生まれやすい接点と、集めやすい形式が異なります。代表的なパターンを整理します(特定企業の事例ではなく、一般的な型として記載しています)。

業種主な接点集めやすいUGC収集時の注意
コスメ・スキンケア購入後メール、同梱カード使用感の写真・動画効果効能の表現は薬機法に配慮して掲載可否を判断
飲食店店内POP、撮影スポット料理・店内の写真、地図サービスの口コミ他のお客様の写り込みを確認
D2C・アパレル同梱カード、常設ハッシュタグコーディネート写真人物が写る素材が多いため、肖像の扱いを依頼時に明記
観光・宿泊チェックイン・チェックアウト時の案内客室・景色の写真、旅行記季節性があるため、利用期間を短めに設定するなど調整

業種別の具体的な活用例はUGC活用事例集をご覧ください。

UGC収集で陥りやすい落とし穴

落とし穴1:許諾を取らずに使ってしまう

「SNSで公開されているから使ってよい」という誤解は、トラブルやブランドイメージの低下につながります。最初から許諾フローを業務に組み込んでおきましょう。

落とし穴2:依頼文への返信が少ない

文面が事務的すぎたり、用途が分かりにくかったりすると返信が得られにくくなります。投稿のどこが良かったのかを具体的に伝える、用途を一文で明確にするなど、個別感のある依頼を心がけます。

落とし穴3:集めることが目的化する

件数だけがKPIになると、実際には使われない素材ばかりが溜まります。「集めたUGCを何に使うか」を先に決めてから募集を設計してください。

落とし穴4:ネガティブなUGCへの対応ルールがない

不満や悪い体験の投稿を見つけたときの対応ルールがないと、現場が混乱します。「カスタマーサポートへ共有する」「公式アカウントからの反応方針」などを事前に決めておきます。

落とし穴5:単発キャンペーンで終わる

募集型の企画は期間中に投稿が集中しますが、終了後は減りやすくなります。常設ハッシュタグや購入後メールなど、平常時の仕組みと組み合わせることが大切です。

まとめ

UGC収集は「発生促進 → 検出 → 許諾 → 蓄積 → 活用」の5段階を、決まった手順で回し続ける業務です。特に、募集型キャンペーンは応募要項の設計シートで条件を固めること、ハッシュタグは常設用と企画用を分けて表記揺れまで管理すること、許諾は担当・期限・記録を決めたフローで運用することが、実務の要になります。

許諾依頼の文面はUGC利用許諾の取り方のテンプレートを出発点にし、自社の用途に合わせて調整してください。SIGNAL BASE では、マイクロインフルエンサーの継続起用によって、UGC収集の起点となる「最初の投稿」づくりを支援しています。