この記事は、InstagramやTikTokでPR投稿・ギフティング案件を受けている会社員・主婦(主夫)・学生の方に向けて、確定申告の基本に加え「SNS副業ならではの論点」を整理したガイドです。一般的な副業の確定申告記事ではあまり扱われない、提供品(ギフティング)を受け取ったときに考える観点、撮影用の購入品や機材を経費として考えるときの整理の仕方、1年分の案件記録の付け方まで、実務の順番で確認できます。

会社員の方は「20万円以下なら申告不要」と理解している場合が多いですが、これは所得税の話で、住民税の申告は別の扱いになる点が盲点になりやすい論点です。なお、本記事は一般的な情報の整理であり、税制は改正されることがあります。最新の制度や個別の判断は、国税庁のサイト・所轄の税務署・税理士にご確認ください。

目次
  1. SNS副業収入の税法上の扱い
  2. あなたは確定申告が必要か?フローチャート
  3. 20万円以下でも住民税申告は必要
  4. 青色申告と白色申告の判断
  5. 経費にできるもの・できないもの
  6. 提供品(現物報酬)の扱い
  7. SNS副業に特有の収入を整理する観点
  8. 経費かどうかを考える3つの問いと、1年分の記録の付け方
  9. 申告書類と提出の流れ
  10. データで見る:副業をする人は増えている
  11. よくある質問

SNS副業収入の税法上の扱い

SNS副業で得た収入は、一般的に「雑所得」または「事業所得」のいずれかに分類されます。

分類該当するケース特徴
雑所得会社員の副業、月数万円規模白色申告のみ、損益通算不可
事業所得継続性・反復性があり、生計を立てる規模青色申告可、損益通算可、最大65万円控除

2022年の所得税基本通達の改正では、副業などの収入金額が年300万円以下で、帳簿書類の保存がない場合などは、原則として雑所得として扱う考え方が示されました。会社員の方が SNS 副業をしている場合、多くは雑所得として扱われると考えるのが一般的ですが、実際の区分は取引の実態で判断されます。詳細は国税庁の案内や税務署でご確認ください。

あなたは確定申告が必要か?フローチャート

確定申告が必要かどうかは、職業と所得額で決まります。下記フローで自分の状況を確認してください。

① 会社員(給与所得あり)の場合

② 個人事業主・フリーランスの場合

③ 専業主婦・主夫の場合

④ 学生の場合

注意

ここで言う「所得」は「売上」ではなく、「売上 − 必要経費」の額です。たとえば売上が30万円でも、経費15万円なら所得は15万円となり、20万円以下のルールが使えます。また、基礎控除などの金額は税制改正で見直されることがあります。申告する年分の金額は、必ず国税庁の最新情報で確認してください。

20万円以下でも住民税申告は必要

会社員のSNS副業で最も誤解されやすいのが、「所得税の20万円ルールは住民税には適用されない」点です。所得税は申告不要でも、住民税は所得があれば申告が必要というのが原則です。取扱いの細部は自治体によって異なる場合があるため、お住まいの市区町村にも確認しておくと安心です。

住民税申告の流れ

  1. 1〜12月の SNS 副業の収入・経費を集計
  2. 翌年の1〜3月、お住まいの市区町村の役所で住民税申告
  3. 申告書には「給与以外の所得」として記入
  4. 「自分で納付」(普通徴収)を選ぶと、会社に副業分の住民税が通知されない

会社にバレるかどうかは、ここの「自分で納付」を選べているかで大きく変わります。確定申告する場合も同じで、申告書の住民税欄で「自分で納付」にチェックを入れることが、副業バレを防ぐ実務上のコツです。詳細は副業がバレない方法で整理しています。

青色申告と白色申告の判断

事業所得として申告する場合、青色申告と白色申告の選択肢があります。多くのSNS副業は雑所得扱いになるため青色は使えませんが、規模が大きくなった場合の参考に整理します。

項目青色申告白色申告
所得控除最大65万円なし
事前申請必要(開業届+青色申告承認申請)不要
帳簿複式簿記単式簿記
純損失(赤字)の繰越3年繰越可不可

SNS副業の規模が大きくなり、継続的な事業として取り組むようになってきたら、事業所得化と青色申告を検討する価値があります。会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生など)を使えば、複式簿記も実務上は処理しやすくなります。進め方はSNS副業の青色申告ガイドで詳しく整理しています。

経費にできるもの・できないもの

SNS副業で経費にできる範囲は、税法的には「事業(業務)に関連する支出」とされています。一般的には以下のようなものが挙げられます。

経費になりうるもの(事業関連性が明確な場合)

経費にできないもの

提供品(現物報酬)の扱い

SNS副業で意外と漏れやすいのが、企業から提供された商品の扱いです。投稿などの対価として受け取った提供品は、一般的に「現物での報酬(経済的利益)」として収入に含める考え方がとられます。

現物報酬の評価額の考え方

たとえばコスメ1万円分を提供されてレビュー投稿した場合、現金報酬5,000円とは別に、提供品の価額が収入として扱われる可能性があります。1年間の累積でこれが大きくなると、20万円のラインを超えるケースも出てきます。提供品の金額メモは、案件ごとに必ず残してください。

SNS副業に特有の収入を整理する観点

SNS副業は、一般的な副業(アルバイトや業務委託の作業)と比べて、収入の形がばらばらになりやすいのが特徴です。現金・商品・体験・ポイントが混在するため、「どれを記録すべきか」で迷う方が多くいます。まずは受け取ったものを次の観点で仕分けておくと、申告時や相談時の説明がスムーズになります。

受け取り方具体例整理のときに確認したい観点
PR投稿の報酬(現金)企業・キャスティング会社からの振込源泉徴収されているか/支払調書の有無/役務提供(投稿)が完了した日
ギフティング(商品提供)コスメ・食品・家電などの提供投稿が条件だったか/条件のない贈り物か/価額をどう把握したか/受け取り後に撮影用として使い続けるか私的に使うか
体験・招待飲食店・ホテル・イベントへの招待投稿の依頼があったか/提供された内容と価額の分かる資料(メニュー表・料金表)を保存したか
成果報酬アフィリエイト・紹介料確定日と入金日のずれ/プラットフォームの報酬明細の保存
ポイント・ギフト券報酬がポイントやギフト券で付与される現金以外でも経済的利益になりうる点/付与日と金額の記録

ポイントは、「投稿や発信の対価として受け取ったかどうか」を記録から説明できるようにしておくことです。同じ商品でも、PR投稿の依頼とセットで届いたものと、友人からの純粋なプレゼントでは、考え方が異なる可能性があります。依頼メールやDMのスクリーンショットを案件ごとに保存しておくと、後から判断材料として使えます。

判断に迷ったら

ギフティングや体験招待の扱いは、商品の種類・受け取り方・その後の使い方によって判断が分かれることがあります。本記事は考えるための観点の整理に留めています。個別の扱いは、所轄の税務署や税理士に、記録を見せながら相談するのが確実です。

経費かどうかを考える3つの問いと、1年分の記録の付け方

SNS副業では、撮影用に買った服やコスメ、カフェ代など「私生活と発信の境目」にある支出が多くなります。経費として扱えるかどうかを考えるときは、次の3つの問いで整理しておくと、自分でも説明しやすくなります。

  1. その支出は、発信や案件の収入を得るために必要だったか(例:レビュー投稿のために購入した商品)
  2. 私的な利用と区別できるか(例:スマホや通信費は、発信での使用割合を合理的に説明できるか)
  3. 後から第三者に説明できる記録が残っているか(例:レシート+どの投稿に使ったかのメモ)

3つ目が抜けているケースが特に多いので、次のような「案件台帳」を1年分つけておくことをおすすめします。表計算ソフトでも、会計ソフトのメモ欄でも構いません。

記録する項目記入例残しておく証拠
依頼日・企業名○月○日/○○化粧品依頼メール・DMのスクリーンショット
受け取った形現金/商品/体験/ポイント契約内容・案件ページの画面
金額・参考価格報酬額、提供品の定価の控え公式サイトの価格ページの画面保存
投稿日・投稿URL○月○日/投稿へのリンク投稿のスクリーンショット
入金日・源泉徴収○月○日入金/源泉徴収の有無通帳・支払明細・支払調書
関連する支出撮影小物・交通費などレシート+用途メモ

記録は「月末にまとめて」より、案件が完了した時点でその都度1行書くほうが漏れにくくなります。年末に1年分を振り返ろうとすると、提供品の価格や投稿日を思い出せないことが多いためです。

申告書類と提出の流れ

必要な書類(雑所得・白色申告の場合)

提出方法

  1. e-Tax(電子申告):マイナンバーカードを使い、自宅から提出
  2. 税務署窓口:1〜3月は混雑するので早めに
  3. 郵送:書類を税務署に郵送、控えに受領印が欲しい場合は返信用封筒同封

会計ソフト経由でe-Taxと連携する方法も一般的になっています。freee・マネーフォワード・弥生などには個人向けの比較的安価なプランもあります(料金やプラン内容は各社の公式サイトでご確認ください)。

データで見る:副業をする人は増えている

確定申告の相談が増えている背景には、副業をする人そのものの増加があります。総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」によると、副業がある人は2022年に305万人で、5年前から60万人増えました。さらに、副業を希望している人は493万人にのぼります。

副業を始める人が増えるほど、「申告が必要だと知らなかった」「提供品の記録を残していなかった」というつまずきも増えやすくなります。SNS副業は小さな金額の案件が積み重なる働き方なので、始めた月から記録を付ける習慣が、そのまま申告の負担軽減につながります。副業人口の詳しいデータは副業の実態データで整理しています。

よくある質問

Q. インスタの案件単価が安く、所得が出ていません。それでも申告が必要?

所得(売上 − 経費)が会社員の場合20万円以下、専業の場合48万円以下なら、所得税の申告は不要とされています。ただし会社員でも住民税の申告は必要になるケースが多いため、お住まいの市区町村に確認してください。

Q. 報酬が振り込まれた日と投稿した日、どちらの年度に計上する?

一般的には「投稿が完了した日」(役務提供が完了した日)を基準に考えます。12月に投稿、翌年1月入金の案件は、12月分として計上するのが基本的な考え方です。迷う場合は税務署に確認してください。

Q. SIGNAL BASE で受けた案件の支払調書はもらえる?

はい、年末調整時期に支払調書をお送りしています。源泉徴収済みの場合、確定申告で還付を受けられるケースもあります。

Q. 副業を会社に絶対バレないようにするには?

住民税申告時に「自分で納付」を選択することで、副業分の住民税が会社に通知されない運用にできます。確実とは断言できませんが、リスクを大きく下げる定番の対応です。

まとめ

SNS副業の確定申告は、まず「所得税の申告が必要か」と「住民税の申告」を分けて考えることが出発点です。そのうえでSNS副業ならではの論点として、現金以外の形(商品・体験・ポイント)で受け取ったものを記録すること、経費は「収入との関連・私用との区別・記録」の3つの問いで整理すること、そして案件が終わるたびに台帳へ1行書くことを習慣にしておくと、申告時期に慌てずに済みます。

本記事は一般的な考え方の整理です。税制は改正されることがあり、提供品の扱いなどは個別の事情で判断が分かれます。最新の制度や具体的な判断は、国税庁・所轄の税務署・税理士にご確認ください。SIGNAL BASE では案件ごとの支払調書もお渡ししていますので、記録づくりの材料としてご活用ください。