この記事は、InstagramやTikTokでPR投稿・ギフティング案件を受けている会社員・主婦(主夫)・学生の方に向けて、確定申告の基本に加え「SNS副業ならではの論点」を整理したガイドです。一般的な副業の確定申告記事ではあまり扱われない、提供品(ギフティング)を受け取ったときに考える観点、撮影用の購入品や機材を経費として考えるときの整理の仕方、1年分の案件記録の付け方まで、実務の順番で確認できます。
会社員の方は「20万円以下なら申告不要」と理解している場合が多いですが、これは所得税の話で、住民税の申告は別の扱いになる点が盲点になりやすい論点です。なお、本記事は一般的な情報の整理であり、税制は改正されることがあります。最新の制度や個別の判断は、国税庁のサイト・所轄の税務署・税理士にご確認ください。
SNS副業収入の税法上の扱い
SNS副業で得た収入は、一般的に「雑所得」または「事業所得」のいずれかに分類されます。
| 分類 | 該当するケース | 特徴 |
|---|---|---|
| 雑所得 | 会社員の副業、月数万円規模 | 白色申告のみ、損益通算不可 |
| 事業所得 | 継続性・反復性があり、生計を立てる規模 | 青色申告可、損益通算可、最大65万円控除 |
2022年の所得税基本通達の改正では、副業などの収入金額が年300万円以下で、帳簿書類の保存がない場合などは、原則として雑所得として扱う考え方が示されました。会社員の方が SNS 副業をしている場合、多くは雑所得として扱われると考えるのが一般的ですが、実際の区分は取引の実態で判断されます。詳細は国税庁の案内や税務署でご確認ください。
あなたは確定申告が必要か?フローチャート
確定申告が必要かどうかは、職業と所得額で決まります。下記フローで自分の状況を確認してください。
① 会社員(給与所得あり)の場合
- SNS副業の所得(売上 − 経費)が年20万円超 → 確定申告が必要
- 20万円以下 → 所得税の確定申告は不要、ただし住民税の申告は必要(後述)
② 個人事業主・フリーランスの場合
- 所得金額にかかわらず、原則として確定申告が必要
③ 専業主婦・主夫の場合
- SNS副業の所得が年48万円超(基礎控除額) → 確定申告が必要
- 20万円ルールは適用されない(給与所得がないため)
④ 学生の場合
- 親の扶養に入っている場合、所得48万円超で扶養から外れる可能性
- 勤労学生控除(27万円)を使えば、所得75万円までは所得税0円
ここで言う「所得」は「売上」ではなく、「売上 − 必要経費」の額です。たとえば売上が30万円でも、経費15万円なら所得は15万円となり、20万円以下のルールが使えます。また、基礎控除などの金額は税制改正で見直されることがあります。申告する年分の金額は、必ず国税庁の最新情報で確認してください。
20万円以下でも住民税申告は必要
会社員のSNS副業で最も誤解されやすいのが、「所得税の20万円ルールは住民税には適用されない」点です。所得税は申告不要でも、住民税は所得があれば申告が必要というのが原則です。取扱いの細部は自治体によって異なる場合があるため、お住まいの市区町村にも確認しておくと安心です。
住民税申告の流れ
- 1〜12月の SNS 副業の収入・経費を集計
- 翌年の1〜3月、お住まいの市区町村の役所で住民税申告
- 申告書には「給与以外の所得」として記入
- 「自分で納付」(普通徴収)を選ぶと、会社に副業分の住民税が通知されない
会社にバレるかどうかは、ここの「自分で納付」を選べているかで大きく変わります。確定申告する場合も同じで、申告書の住民税欄で「自分で納付」にチェックを入れることが、副業バレを防ぐ実務上のコツです。詳細は副業がバレない方法で整理しています。
青色申告と白色申告の判断
事業所得として申告する場合、青色申告と白色申告の選択肢があります。多くのSNS副業は雑所得扱いになるため青色は使えませんが、規模が大きくなった場合の参考に整理します。
| 項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 所得控除 | 最大65万円 | なし |
| 事前申請 | 必要(開業届+青色申告承認申請) | 不要 |
| 帳簿 | 複式簿記 | 単式簿記 |
| 純損失(赤字)の繰越 | 3年繰越可 | 不可 |
SNS副業の規模が大きくなり、継続的な事業として取り組むようになってきたら、事業所得化と青色申告を検討する価値があります。会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生など)を使えば、複式簿記も実務上は処理しやすくなります。進め方はSNS副業の青色申告ガイドで詳しく整理しています。
経費にできるもの・できないもの
SNS副業で経費にできる範囲は、税法的には「事業(業務)に関連する支出」とされています。一般的には以下のようなものが挙げられます。
経費になりうるもの(事業関連性が明確な場合)
- レビュー対象を購入した場合の購入費
- 撮影機材(カメラ・スマホ・三脚・照明)
- 編集ソフトのサブスクリプション
- SNS分析ツールの利用料
- 取材・体験のための移動費・宿泊費
- セミナー受講料・専門書籍
- 自宅で作業する場合の家事按分(家賃・電気代の事業使用分)
経費にできないもの
- プライベートでの食事・飲み会
- レビューと関係ない私物
- 家族との旅行(取材目的でないもの)
提供品(現物報酬)の扱い
SNS副業で意外と漏れやすいのが、企業から提供された商品の扱いです。投稿などの対価として受け取った提供品は、一般的に「現物での報酬(経済的利益)」として収入に含める考え方がとられます。
現物報酬の評価額の考え方
- 定価が明示されている場合 → 定価を参考にする考え方
- 定価が不明な場合 → 通常の小売価格(時価)を参考にする考え方
- サンプル品・少額のもの → 扱いが分かれやすいため、判断は税務署・税理士に確認
たとえばコスメ1万円分を提供されてレビュー投稿した場合、現金報酬5,000円とは別に、提供品の価額が収入として扱われる可能性があります。1年間の累積でこれが大きくなると、20万円のラインを超えるケースも出てきます。提供品の金額メモは、案件ごとに必ず残してください。
SNS副業に特有の収入を整理する観点
SNS副業は、一般的な副業(アルバイトや業務委託の作業)と比べて、収入の形がばらばらになりやすいのが特徴です。現金・商品・体験・ポイントが混在するため、「どれを記録すべきか」で迷う方が多くいます。まずは受け取ったものを次の観点で仕分けておくと、申告時や相談時の説明がスムーズになります。
| 受け取り方 | 具体例 | 整理のときに確認したい観点 |
|---|---|---|
| PR投稿の報酬(現金) | 企業・キャスティング会社からの振込 | 源泉徴収されているか/支払調書の有無/役務提供(投稿)が完了した日 |
| ギフティング(商品提供) | コスメ・食品・家電などの提供 | 投稿が条件だったか/条件のない贈り物か/価額をどう把握したか/受け取り後に撮影用として使い続けるか私的に使うか |
| 体験・招待 | 飲食店・ホテル・イベントへの招待 | 投稿の依頼があったか/提供された内容と価額の分かる資料(メニュー表・料金表)を保存したか |
| 成果報酬 | アフィリエイト・紹介料 | 確定日と入金日のずれ/プラットフォームの報酬明細の保存 |
| ポイント・ギフト券 | 報酬がポイントやギフト券で付与される | 現金以外でも経済的利益になりうる点/付与日と金額の記録 |
ポイントは、「投稿や発信の対価として受け取ったかどうか」を記録から説明できるようにしておくことです。同じ商品でも、PR投稿の依頼とセットで届いたものと、友人からの純粋なプレゼントでは、考え方が異なる可能性があります。依頼メールやDMのスクリーンショットを案件ごとに保存しておくと、後から判断材料として使えます。
ギフティングや体験招待の扱いは、商品の種類・受け取り方・その後の使い方によって判断が分かれることがあります。本記事は考えるための観点の整理に留めています。個別の扱いは、所轄の税務署や税理士に、記録を見せながら相談するのが確実です。
経費かどうかを考える3つの問いと、1年分の記録の付け方
SNS副業では、撮影用に買った服やコスメ、カフェ代など「私生活と発信の境目」にある支出が多くなります。経費として扱えるかどうかを考えるときは、次の3つの問いで整理しておくと、自分でも説明しやすくなります。
- その支出は、発信や案件の収入を得るために必要だったか(例:レビュー投稿のために購入した商品)
- 私的な利用と区別できるか(例:スマホや通信費は、発信での使用割合を合理的に説明できるか)
- 後から第三者に説明できる記録が残っているか(例:レシート+どの投稿に使ったかのメモ)
3つ目が抜けているケースが特に多いので、次のような「案件台帳」を1年分つけておくことをおすすめします。表計算ソフトでも、会計ソフトのメモ欄でも構いません。
| 記録する項目 | 記入例 | 残しておく証拠 |
|---|---|---|
| 依頼日・企業名 | ○月○日/○○化粧品 | 依頼メール・DMのスクリーンショット |
| 受け取った形 | 現金/商品/体験/ポイント | 契約内容・案件ページの画面 |
| 金額・参考価格 | 報酬額、提供品の定価の控え | 公式サイトの価格ページの画面保存 |
| 投稿日・投稿URL | ○月○日/投稿へのリンク | 投稿のスクリーンショット |
| 入金日・源泉徴収 | ○月○日入金/源泉徴収の有無 | 通帳・支払明細・支払調書 |
| 関連する支出 | 撮影小物・交通費など | レシート+用途メモ |
記録は「月末にまとめて」より、案件が完了した時点でその都度1行書くほうが漏れにくくなります。年末に1年分を振り返ろうとすると、提供品の価格や投稿日を思い出せないことが多いためです。
申告書類と提出の流れ
必要な書類(雑所得・白色申告の場合)
- 確定申告書(様式は年分によって変わることがあるため、国税庁サイトで最新版を確認)
- 収入・経費の明細(前章の案件台帳を元に作成)
- 源泉徴収票(会社員の場合)
- 各種控除証明書(保険・寄附金等)
- マイナンバーカード(電子申告の場合)
提出方法
- e-Tax(電子申告):マイナンバーカードを使い、自宅から提出
- 税務署窓口:1〜3月は混雑するので早めに
- 郵送:書類を税務署に郵送、控えに受領印が欲しい場合は返信用封筒同封
会計ソフト経由でe-Taxと連携する方法も一般的になっています。freee・マネーフォワード・弥生などには個人向けの比較的安価なプランもあります(料金やプラン内容は各社の公式サイトでご確認ください)。
データで見る:副業をする人は増えている
確定申告の相談が増えている背景には、副業をする人そのものの増加があります。総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」によると、副業がある人は2022年に305万人で、5年前から60万人増えました。さらに、副業を希望している人は493万人にのぼります。
副業を始める人が増えるほど、「申告が必要だと知らなかった」「提供品の記録を残していなかった」というつまずきも増えやすくなります。SNS副業は小さな金額の案件が積み重なる働き方なので、始めた月から記録を付ける習慣が、そのまま申告の負担軽減につながります。副業人口の詳しいデータは副業の実態データで整理しています。
よくある質問
Q. インスタの案件単価が安く、所得が出ていません。それでも申告が必要?
所得(売上 − 経費)が会社員の場合20万円以下、専業の場合48万円以下なら、所得税の申告は不要とされています。ただし会社員でも住民税の申告は必要になるケースが多いため、お住まいの市区町村に確認してください。
Q. 報酬が振り込まれた日と投稿した日、どちらの年度に計上する?
一般的には「投稿が完了した日」(役務提供が完了した日)を基準に考えます。12月に投稿、翌年1月入金の案件は、12月分として計上するのが基本的な考え方です。迷う場合は税務署に確認してください。
Q. SIGNAL BASE で受けた案件の支払調書はもらえる?
はい、年末調整時期に支払調書をお送りしています。源泉徴収済みの場合、確定申告で還付を受けられるケースもあります。
Q. 副業を会社に絶対バレないようにするには?
住民税申告時に「自分で納付」を選択することで、副業分の住民税が会社に通知されない運用にできます。確実とは断言できませんが、リスクを大きく下げる定番の対応です。
まとめ
SNS副業の確定申告は、まず「所得税の申告が必要か」と「住民税の申告」を分けて考えることが出発点です。そのうえでSNS副業ならではの論点として、現金以外の形(商品・体験・ポイント)で受け取ったものを記録すること、経費は「収入との関連・私用との区別・記録」の3つの問いで整理すること、そして案件が終わるたびに台帳へ1行書くことを習慣にしておくと、申告時期に慌てずに済みます。
本記事は一般的な考え方の整理です。税制は改正されることがあり、提供品の扱いなどは個別の事情で判断が分かれます。最新の制度や具体的な判断は、国税庁・所轄の税務署・税理士にご確認ください。SIGNAL BASE では案件ごとの支払調書もお渡ししていますので、記録づくりの材料としてご活用ください。